みなさんは「回避依存症」という言葉をご存知でしょうか?
回避依存症とは他人との間に距離を保ちたがる、深い人間関係になることを回避する人に見られる傾向です。
この回避依存症の人と深い関係になると、多くの疑問が生じます
あれ?何でそんな考え方なんだろう?普通と違う、何かが変だ...
言葉で説明できない違和感があります。
僕は34歳で心理カウンセラーの仕事をしていますが、20代前半の頃は回避依存症の脱走者タイプでした。
今では回避依存症の傾向はおさまっていますが、逆に回避依存症の女性と付き合ったこともあり、
- 回避依存症の男性が何を考えているか
- 回避依存症の男性とはどうすれば適切に付き合えるか
実体験からわかります。
特に、現在回避依存症男性との恋愛やお付き合いの中で悩んでいる方は今日の記事を参考にしてください。
この記事を読めば、意味不明に思える回避依存症者の思考や癖がわかります
回避依存症のタイプ
まず、回避依存症と一口に言っても、四つのタイプがあります。
ちなみに僕は元脱走者タイプで、症状が収まってから脱走者タイプ女性との恋愛も経験しましたが、それぞれについて説明します。
1 独裁者タイプの特徴
回避依存症の独裁者タイプには以下のような特徴があります
- 自分の思い通りにいかないと気が済まない
- 上から目線で命令することが多い
- 相手が新しいことに挑戦したり、新たな人間関係を築くことを嫌がる
- 「自分に従わないと大変なことになる」「自分に従っていれば間違いはない」といった発言
- DVや言葉の暴力を伴うこともある
- 相手をコントロールしようとする
このタイプは比較的、わかりやすいです。
自分の非を一切認めない。身体的な暴力やモラハラ発言を伴うなどの特徴があります。
典型的なのはDVをする男性。絶対的に自分が正しく、明らかに自分に非があっても決して認めようとしません。
2 搾取者タイプの特徴
- 「自分は利用されているだけではないか?」と思わせられる言動
- 金銭的な搾取を伴う
- 何かを頼むときは優しくなり、要求が通った後は何事もなかったかのように振る舞う
- 「〜があったらなあ」「〜してくれる人がいたら助かるのに」などと、間接的に欲しいものを要求して相手をコントロールしようとする
このタイプは直接的な暴力や発言を伴う独裁者タイプよりも回りくどいのでわかりにくいです。
高価な物を与えても「〜さえあれば」などと、要求を遠回しに伝えているので、本人の中では「相手が勝手にしてくれた」ことになっています。そのため、相手がしてくれたことに対して感謝の気持ちが薄い、あるいは一切ない、都合が悪くなると「余計なお世話で迷惑だった」などと、「恩知らず」な態度を取るのが特徴です。
典型的な搾取者タイプは、洗脳をする詐欺師ややり手のホスト。このタイプにハマった側は「私が勝手にやったことだから」と、相手を責めることがありません。
3 ナルシストタイプの特徴
- 自慢ばかりする
- 高すぎるプライド
- 自分は他人よりも優れた存在であると思っている
- 自分を認めてくれる人は絶賛するが、批判されると過度に反発する
独裁者タイプと並んでわかりやすいのがナルシストタイプ。
ナルシストタイプは自分を素晴らしい存在として特別視することを要求します。
周りから見ていると、嘘っぽい絶賛、おべんちゃらを使う相手でも真に受けて大喜びする、イエスマンをそばに置きたがります。
プライドが高すぎるので他人に使われることを好みません。起業するなどして大きな成果を残すこともありますが、このタイプの人を思って欠点を指摘しても、「自分にもダメなところがある」という現実を受け付けないので敵視されます。
4 脱走者タイプ
最もわかりにくいのが脱走者タイプです。このタイプの特徴は
- 相手との心の距離が近づくと、怖くなって突き放す
- 自分から突き放しておいて、距離が開くと不安になってまた近寄ってくる
- 八方美人で、極めて近い関係の人以外にはその症状を出さない
- 束縛を過度に嫌がる
- 責任から全力で逃れようとする
- 自分が何をしているか秘密にしたがる
自分を深く理解してくれる人を欲しいと強烈に思っている一方で、相手が過度に近づくと怖くなって逃げていくのが脱走者タイプの特徴。
最初は「大好き」といった態度で近寄ってきたのに、特に理由もなく距離を取ったりするので恋愛相手にすると著しく精神を消耗します。
特に浮気を繰り返す、複数のパートナーを持ちたがる男性などに多いです。
回避依存症のタイプは複合しているケースが多い
四つのタイプについて解説しましたが、回避依存症者はハッキリとタイプ別に分かれているケースもありますが、人それぞれ複合していることが多いです。
回避依存症というのは「精神的な病気」というよりは、あるタイプの人に共通する考え方の癖や傾向のようなものなので、「あの人はこのタイプだからこうに違いない」などと決めつけるのは危険です。
回避依存症の原因は「アダルトチルドレン(AC)」
回避依存症は、「アダルトチルドレン」の表れ方のひとつです。
いわゆる「メンヘラ(境界性人格障害・ボーダー)」などと言われる人もこの「アダルトチルドレン」の一種ですが、
「アダルトチルドレン」という大きな枠の中の一つに回避依存症も含まれています。
アダルトチルドレン(AC)とは?
アダルトチルドレン(AC)とは、主に子どもの頃に親や養育者から受けた心理的トラウマが原因で、大人になってからも生きづらさを感じながら生活している人たちのことを指します。
アダルトチルドレン(AC)は医学的な診断名ではなく、もともとは「アルコール依存症の親のもとで育てられた子ども」を指す「Adult Children of Alcoholics(ACoA)」という言葉でした。
しかし、今ではその解釈が広がって、肉体的・精神的虐待や過干渉など、様々な家庭環境や問題を抱えた親のもとで育った人たち、トラウマや心の傷を抱えたまま大人になった人たちもアダルトチルドレンと呼ぶようになりました。
アダルトチルドレンの特徴
アダルトチルドレンとは、育った家庭環境や毒親の問題によってトラウマを抱えたまま大人になった人たちのことを指します。
問題を抱えた毒親ではなく健全な愛情を持つ親に育てられていても、その人が何かのきっかけで「ありのままの自分には価値がないんだ」と子供の頃に受け取ってしまうと、回避依存症者となってしまうことがあります。
アダルトチルドレン的な傾向がある人の中には自傷するメンヘラ(ボーダー)、自傷しないメンヘラ(高機能性ボーダー)、回避依存者、恋愛依存症者などさまざまなタイプの人がいますが、
これら全ての人に共通しているのは「自尊心が低い」ということです。
恋愛における回避依存症者と恋愛依存症者の組み合わせの問題
回避依存症者と恋愛依存症者が恋愛関係に入ると、さまざまな問題が起こります。
共通点としてどちらも自尊心が低いので、健全に愛情を育むことができなくなりお互い激しく精神を消耗したり、
両者がボロボロになって多くの場合、どこかで関係が破綻してしまいます。
お互い「自尊心が高い」健全な恋愛の場合
自尊心が高い人同士のカップルは「ありのままの自分を肯定している」「自分自身が好き」なので
あなたのことが大好き!
ありがとう!俺も大好き!だから大事にします!
私を大事にしてくれてありがとう!私もあなたを大事にする!
ありがとう!じゃあ俺はもっともっとあなたを大事にします!
このように、お互いに愛情を与え合って、どんどん愛情が連鎖していきます。
螺旋階段のように愛情が高まっていくと考えてもらえたらわかりやすいでしょう。
お互い「自尊心が低い」恋愛依存症者と回避依存症者の恋愛の場合
続いて、お互いに自尊心が低い人同士の恋愛について考えてみましょう。
男性が回避依存症者の場合は以下のようなパターンになります
あなたのことが大好き!
ありがとう!私も大好き!
ここまでは自尊心が高い人同士の健全な恋愛と同じですが、この後に問題が発生します。
そのパターンは以下のようなものです。
俺には価値がないのに、この人はどうして大好きなんて言ってるんだろう?信じられない。本当に大好きなのか冷たくして試して愛情を確かめたい...
あれ?冷たくなった...私に価値がないから嫌いになったのかな?私はあなたに嫌われたら生きていけない!お願いだから愛情を返して!
価値がない俺のことを大好きなんて、やっぱり信じられないし、距離が近すぎて怖い...もっと距離を取っても見捨てられないか確かめたい...
また距離を取られてる!絶対に嫌われてる!やっぱり私に価値がないから見捨てられたのかな?わたしも距離を取ってみよう...
愛情を確かめたら離れていった、やっぱり本当の愛情じゃなかった...俺には価値がないんだ、けど自分を大好きって言ってくれる人を失いたくない、また優しくして距離を近づけてみよう
あれ...優しくしてくれたってことは、やっぱり私のことを好きなの?あなたなしでは考えられない!見捨てないで!大好き!
このようなパターンに陥って、愛情の連鎖が途中で止まってしまいます。
一言で言えば、恋愛依存症者と回避依存症者の恋愛とは、自分を好きではない似た者同士の恋愛です。
なぜ回避依存症者は途中で逃げ出すのか?回避依存症者の考えていること
健常者から見ると、最初は自分のことを大好きと言って近寄ってきた回避依存症者が、逃げ出してしまうことが不思議に思えるでしょう。
実体験からこの時の回避依存症者男性の気持ちを解説すると、以下のような思考回路になっています。
1.恋愛依存症者に惹かれて、好意を示して接近していく。相手を理想的な存在だと考える
回避依存症者は子供の頃に親から愛情を得られなかった、または何らかの原因で他人からそのままの自分を愛されなかったトラウマを持っており、そのままの自分を愛してくれる可能性のある恋愛依存症者に惹かれて近寄っていきます。
この時、恋愛依存症者側も回避依存症者に惹かれると、お互いに「理想的な人を見つけた」と、両想いで幸せな状態に入ります。しかし、この状態は長くは続きません。
2.価値のない自分を好きな相手がおかしく見えてくる
理想的な人から子供の頃に得られなかった大きな愛情を返されると、回避依存症者は相手が信じられなくなっていきます。
この時の気持ちは、偽物のブランド品(価値のない自分)を身につけているのに、絶賛されているような気持ちです。
偽物なのに価値があるって言ってるこの人はちょっとおかしいんじゃないか...?
本物のブランド品を身につけている=自分に価値があると信じているならこのような思考はしませんが、
自分自身を嫌いだから相手の愛情を素直に受け取れなくなります。
3.愛されない状態に無意識で戻りたがる
「自分はそのままでは愛されない存在なんだ」と深層心理で考えている回避依存症者は、恋愛依存症者から子供の頃にもらえなかった大きな愛情を注がれても、その愛情に応えることなく元の「他人から愛されない」状態に戻ろうとします。
悲しいことに、他人から全面的に愛されたいと強く願っているのに「愛されている状態」が普通ではないので、自分からその状態を壊そうとしてしまうのです。
これは「幸せ恐怖症」とも言われる状態で、他人から愛される=幸せな状態に慣れていないので、元の他人から愛されない状態=不幸な状態に戻ろうとして、相手に冷たくあたってしまうのです。
自分が無償の大きな愛を注がれる、価値のある存在だと信じられないので、心の底では「この愛情も続かない、また見放されるに決まっている」と考えています。
そして
相手から見放されるのは恐ろしいから、自分からこの関係を壊してしまおう...
こう考えるようになります。
そして、恋愛依存症者が諦めて離れていった時の回避依存症者の気持ちは
やっぱり離れていった、本当の愛情が欲しかったけどいつもの状態に戻ってちょっとホッとした。
このようなものです。相手からすると理解不能なんですが、自分から関係を壊そうとしておきながら、それでも離れていってほしくはない気持ちと、自分は愛されない存在なんだと確認できてホッとした気持ちがごちゃ混ぜになった、複雑な感情なのです。
回避依存症者は恋愛依存症者を嫌いになっている?
外から見ると、回避依存症者は自分を大好きな恋愛依存症者にとても冷たくあたります。
しかし、回避依存症者は相手のことを嫌いになったわけではありません。
むしろ逆です。大好きでありのままの自分のことを認めてくれる貴重すぎる存在だからこそ、その愛情が本物なのかどうか確かめたくて冷たくあたってしまうのです。
冷酷になってしまった回避依存症者の気持ち
必死で距離を取ろうとする回避依存症者は恋愛依存症者側から見ると宇宙人を相手にしているような、支離滅裂な行動をします。
「もう近寄らないで欲しい」
という態度なのに、本当に離れたら見捨てられることを恐れて戻ってくる。また距離が近づくと突き放す。この繰り返しとなります。
回避依存症者だった僕の実体験では、回避依存症者が恋愛依存症者に冷たくあたっている時、心の奥底では自分が相手を傷つけていると理解しています。
しかし、その時は全て相手が悪いと考えて、自分が悪いと認めることができません。
その理由は、心が弱すぎて自分が悪いと認めることができないからです。
回避依存症者が軽い女と浮気をするのはなぜ?
回避依存症者男性の多くが浮気をしますが、このメカニズムは実体験から説明できます。
回避依存症者は好きになった特別な相手を突き放して、相手も諦めて愛情が得られなくなると、とてもわがままですがまた愛情が欲しくてたまらなくなります。
そして、自分に近寄ってくる軽い女性にも優しくして愛情を求め始めます。
これは飢えている動物が何でも食べるように、相手が好きでなくても構いません。
「他人から愛情が得られない」という状態に耐えられないんです。
しかし、この状態には矛盾があります。
自分のことをを大好きで特別な存在の恋愛依存症者には優しくできないのに、たいして自分のことを好きでもない遊びの女には優しくできる。
普通に考えたら、特別好きな女性に一番優しくするべきなのに、なぜどうでもいい女に優しくするのか?
これは、回避依存症者のバグのようなものですが、
特別な存在の女性と関わって消耗するより、お互いに深く入り込まないセフレのような関係の方が、適度な距離を空けながら愛情を得られるから気楽なのです。
回避依存症者の本命は?
回避依存症者との関係で悩んでいる恋愛依存症者の女性は、
彼の本命は誰なの?
こう考えると思います。
実体験から答えると、回避依存症者の本命とは自分自身です
心の底から信じられる無償の愛が得られない状態では、他人を愛することなどできないので、
これ以上傷つかないために自分自身を守るしかありません。
心が弱すぎて、他人の心を思いやる余裕がないのです。
回避依存症者との恋愛で消耗した恋愛依存症者の多くは
無償の愛が得られなかったなんて可哀想に...私が頑張って、大きな愛情を与えて変えてみせる!
こう考えがちですが、この発想は非常に危険です。
元回避依存症者の立場からすると、恋愛依存症者がこの考え方になると、相手の望む距離が近すぎて飲み込まれるような恐怖を覚えます。こうなると、さらに関係は悪化して修復不可能になることもあります。
他人の考え方をあなたが変えることはできないが、あなたがまず変わることで相手を変えられる可能性はある
これだけは覚えておいてください。